2026/07/25 13:00
天然だと獲れる時期がすごく短くて、市場にもほとんど出回らないんです。
その魚を、海で育てるという挑戦から、桜空SAKURAは生まれたんです。
「幻の魚」と呼ばれる理由
サクラマスは、もともと川で生まれて、海に降りていくタイプの魚なんです。天然のものは獲れる時期もごく短くて、量もそんなに多くない。だから昔から「幻の魚」って呼ばれてきたんですよね。しかも身が繊細で扱いが難しくて、市場に出回る頃にはもう鮮度が勝負にならない、なんてことも多かったみたいなんです。
だからこそ、養殖でこの魚に手を出そうと思う人は、これまであまりいなかったんですよね。「美味しいのは分かってるけど、育てるのが難しいから、みんな手を出さない」。そんな魚だったんです。
食べ慣れている人ほど、天然のサクラマスの美味しさを知っているからこそ、養殖ではその味を再現できないんじゃないか、という不安もあったと思います。手つかずのまま残されてきたのには、それだけの理由があったということなんですよね。
46年ぶりの、海面養殖という挑戦
ふく成が挑戦したのは、この幻の魚を、熊本・天草の御所浦の海で育てるということでした。実はこれ、新しい魚種の海面養殖としては46年ぶりのことなんです。46年って、ちょっと想像がつかないくらい長い時間ですよね。それだけ、誰も踏み込んでこなかった領域だったということなんです。
「幻の魚」が、46年ぶりに海で育つ時代がきたんです。
もちろん最初は手探りだらけでした。水温は何度がいいのか、餌はどれくらいの量とタイミングで与えるのか、ストレスをかけずに育てるにはどうすればいいのか。答えが分かっている魚じゃないから、毎日が試行錯誤の連続だったんです。
私たちには、3代にわたって真鯛やとらふぐを育ててきた養殖の経験がありました。海の状態を毎日見極めながら、その日ごとに餌の与え方を調整する。そういう地道な積み重ねてきたノウハウを、全部この挑戦に注ぎ込んだんです。
うまくいかない時期も、正直たくさんありました。思うように育たなかったり、想定していた大きさにならなかったり。それでも諦めずに向き合い続けた結果、少しずつ、少しずつ、育て方が見えてきたんですよね。
「桜空(サクラ)」という名前
何度も試行錯誤を重ねて、ようやく形になったサクラマスに、「桜空(サクラ)SAKURA」という名前をつけました。御所浦って、海と空の境界が溶け合うような、そんな景色が広がる場所なんです。その空の下で育った魚に、空という文字を入れたいという想いがありました。
そして、桜の季節に生まれるサクラマスというつながりも込めています。春に生まれ、豊かな海流が流れ込む海の恵みを受けて育つ魚。その一生に、桜の彩りを重ねたんです。名前ひとつにも、たくさんの想いが詰まっているんですよね。
名前を決めるときも、実は社内でいろんな意見が飛び交ったんです。「サクラマスなのに、なぜ空という文字が入るのか」って、疑問を持つ声もありました。でも、話し合いを重ねる中で、御所浦という場所そのものが持つ意味を伝えたい、という想いが固まっていったんです。陸上養殖じゃなくて、海の上で、空の下で育てているということ。その事実こそが、桜空というブランドの土台になっていると思っています。
育て方についても、ひとつ工夫があるんです。真鯛やふぐの飼育で培ったノウハウを応用しながら、魚のストレスをできるだけ抑えるような育て方を採用しています。ストレスが少ないと、身が締まりすぎず、程よい脂ののりを保てるんですよね。この積み重ねが、桜空ならではの上品な甘みにつながっているんです。
私たちがこの挑戦を続けている理由は、単に珍しい魚を育てたいから、というだけではありません。
子どもたちの未来に、食をつなげていきたい。そんな想いが根っこにあります。海面養殖という新しい選択肢を切り拓くことが、これからの水産業や地域の未来にとって、意味のある一歩になると信じているんです。
幻の魚が、海で育つという新しい選択肢。それは、私たちにとっても、想像以上に長い道のりでした。でも、その分だけ、桜空という魚には特別な物語が宿っていると思っています。次は、この魚の美味しさを支えているもうひとつの技術の話をしたいと思います。
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